BOFXVI 「透明すぎた僕らの夏は。」作詞過程とか歌詞の解説とか

はじめに

お久しぶりです。Setca.です。BOFXVIにて拙作「透明すぎた僕らの夏は。」がスコア34位、中央値79位を達成しました。また、チーム順位もスコア9位、中央値14位と、いろんな意味で躍進の年だったなあ、と思います。

あらためて、プレイ、インプレして頂いた方にお礼申し上げます。

 

youtu.be初めてこの動画を見た時、感動して一人で泣いてしまった。

 

今回の作品では特に歌詞を褒めていただけることが多かったので、その部分に関してこんな感じで考えてたよ~、ってのを伝えることが出来ればな、と思います。

 

その前に、まずはBOFXVIを戦う上での目標と戦略を設定しました。

 

今回の目標

・スコア上位1割、中央値2桁

昨年の成績がスコア79位、中央値108位だったので、これを上回る成績を目指すこととしました。具体的にはA-1出禁ラインですね。ここを超えるためにこの1年色々と頑張ってきたつもりです。

 

BOFXVIで戦う上での戦略

・王道のボーカルモノをやって注目を集めに行く。

徹底的にシンプルな構成にすることで、逆にプレイヤーに印象付けることを志向しています。

 

・ミキシング>編曲・サウンドメイキング>作曲>作詞の比重で力を入れる。

BMS化に近い工程ほどクオリティに直結するため、そちらに労力を割けるようなスケジュールを意識しています。なお実際は…。個人的に、BMSでは作詞にこだわる意味が薄いと考えています(プレイしながら歌詞まで聴き込む余裕がない&そもそも歌をしっかりと聴かせるミックスに仕上げることが難しいため。僕のようにミキシングが下手なタイプだとより顕著ですね)。特にBOFのような海外勢も多いイベントの場合、総インプレに対する日本語話者の割合が減るため、作詞の重要度は更に落ちるのではないかと思います。しかしながら、世界観がしっかりしているとそれ以降の作業が楽になるので、ある程度作詞の段階で世界観を作り込んでいくつもりでした。

 

・譜面は幅広い難易度を揃え、様々なプレイヤー層にアプローチする。

当然ですね。BOFの場合、全インプレが難しい&少数にインプレをする方が結構多いため、この辺りをしっかりやっているかどうかで地味にインプレ数に差が付くと考えています。

 

作詞をするにあたってのイメージ

僕は方向性がしっかりしていると作詞は大分やりやすくなると考えているので、この部分をまずはしっかりと固めていきます。

今回は夏の恋を漠然とイメージしていました。登場人物の心理描写を上手く行いながら、最初と最後で別れを前面に押し出す、という基本方針を定めた上で、細かい部分は作詞をやりながら考えることにしました。

 

 

構成

普通の音ゲーボーカルモノっぽい構成だと思います。最初にサビを持ってくること、Bメロに「サクラノユメ。」のメロディーを持ってくることを考えていました。

 

 

実際の作詞の流れ

裏話:「透明すぎた僕らの夏は。」という曲タイトルが定まるまでは、「ラストサマー・ダイアリー。」と仮で置いておきました。ちなみに元々は「ラストサマー・メモリーズ。」って曲名にするつもりだったんですけど、A-1で「ウタカタ・サマーメモリーズ」って名曲が登場して、しかも優勝したのでボツになりました。

実は今回発表した歌詞の前にプロトタイプがあったんですが、それはまたの機会に。

 

ラスサビ

まず最初に考えた部分です。

 

最後のページ、思い出綴じて
胸にときめきそっと仕舞うの
もう戻らない、あの夏の日々
刻む言葉は「ありがとう」

 

この部分ですね。

「日記」的な要素を出したかったので、「最後のページ」というフレーズを入れました。

日記である以上何か書くわけですが、ここでは敢えて奇をてらう必要もないと判断し、素直に「ありがとう」という言葉を持ってきました。あとはなんか良い感じになるように頑張りました。

 なんか良い感じ、と言いましたが、フレーズとしては「最後」「綴じる(閉じると掛けています)」「もう戻らない」と、「死」や「別れ」といったものを暗示させるように言葉を組み込んでいます。実際に「僕」と「君」の生死について、(生, 生), (生, 死), (死, 生), (死, 死)の4パターンを提示しつつ、結末を絞り切れないように濁したつもりです。

イントロ

次に考えた部分です。

 

 「ねえ抱きしめて、もう一度だけ」

僕ら、嘘だらけの恋だけど

幸せでした、最後の夏は

強く胸に刻み込んだ

 

こちらです。後にメロディーとの兼ね合いで「刻み込んだ」というフレーズが「刻んだ」へと変わっています。

 

まず「ねえ抱きしめて、もう一度だけ」というフレーズが浮かびました。これ自体は結構ありきたりなフレーズなんじゃないかと思います。だからこそ、この後に予想を裏切るようなフレーズを挟むことにより、逆に視聴者・プレイヤーを一気に引き込むことが出来るのではないかと考えました。

そこで「僕ら、嘘だらけの恋だけど」というフレーズをぶつけ、不穏さを演出しようと考えました。あまり序盤からカロリーが高過ぎるのも良くないと思ったので、その後は無難にまとめています。

 本楽曲の歌詞は全体を通して「解釈する上で、疑ってかかるべきもの」であるということを、ここの「僕ら、嘘だらけの恋だけど」というフレーズで示唆しているつもりです。また、ラストと時系列としては同時期を想定している、すなわちこの後回想入れますよ~、っていうのを結構明確に提示しています。

ラスサビ前

イントロの後に考えた部分です。

 

紙飛行機に、想いを乗せて

風に包んで 空へと投げた

近くて遠い、君との距離は

今も 変わりはしないから

 

ここですね。他と比べると割とすっと出てきた部分です。強いて言うなら、紙飛行機=返ってこないものをモチーフにしたのは、運命の不可逆性を意識していたぐらいです。

  より詳細な部分について。「僕」=Setca.、「君」=プレイヤー、「紙飛行機」=本楽曲、「風」=BMS、「空」=BOFXVIと捉えてますね。ただ、あくまで作詞っていうのは登場人物の心情を描写するものであって、作者の心情をガッツリ投影するものではないと僕は考えているので、あんまりこういうの良くないとも思っています。

 Bメロ

サクラノユメ。地帯です。


流れ星 僕らを繋ぎ止めて
この想い、絶対に同じだよね
手を引いた 小指を絡めたまま
今だけは、ここにいると…

 

歌詞もサクラノユメ。を踏襲した感じにしつつ、少しだけ幼い感じを出してみました。(大体2~3歳ぐらい年下のイメージ)

あっちの主人公が平安時代の18~20歳ぐらいって想定なのに対して、こっちは現代の16~17歳ぐらいのイメージですね。

 

サビ

紙飛行機に 似顔絵描いて
二人一緒に 海へと投げた
僕が描いた 君の絵だけが
波に包まれ 消えていく

 

個人的には今回書いた歌詞の中でファインプレーだと思ってる部分です。

紙飛行機を投げるにあたって、思い出を込められるとしたらなんだろう、と考えていたところ、「似顔絵描いて」というフレーズが頭に浮かびました。灯篭流しみたいなイメージですね。

「僕が描いた〜」以降の部分は冷静に考えるとおかしいんですが、まあ歌詞だし非現実的でも良いじゃないってことで。

 

「大好き」だとか 「愛してる」とか
口に出すだけなら できたけど
僕のそばから 君が消えてく
何故か そんな気がしたんだ

 

こっちはあっさりめにまとめてみました。単体だと結構ありきたりな歌詞なんじゃないかな〜と思うんですが、先の「紙飛行機〜」の部分を置いたことで、心情がくっきりと見えるようになったんじゃないかと思います。

 

 ところでこれは僕の勝手な考え方なんですが、「大好き」や「愛してる」って言葉を使う際は慎重になるべきだと思っています(お前バリバリ使っとるやんけ、というのは置いといて)。理由として、こういった言葉って「関係性を明確にしてしまう言葉」であり、「関係性を破壊しかねない言葉」でもあるんですよね。だからこそ軽率に使ってはいけないな、と自分では考えています。今回はその辺意識した上でこういった言葉を置いてみました。

 

何はともあれ、これで歌詞完成です!この後は歌詞に合わせて作曲して、編曲→ミックスと進めていきます。構成としてはとにかくシンプル、シンプルを追求していきました。

 

おわりに

今までそこそこBMSイベント出てきたつもりですが、今回ようやく一つ壁を超えられた感があって嬉しいですね。

 

でもやっぱり悔しい!!!!!!!!!!!

インプレ頂いて正直まだまだクオリティ詰められるんじゃないかって思いましたし、自分の弱点が一層浮き彫りになったな、って感じています。

今後更に強くなって、もっともっと良い作品を作ってみせます。次回以降の僕の作品にご期待ください。